「無断リンク禁止」と「はてなブックマーク」批判(ま、何を言っても自由だけどね)

http://slashdot.jp/article.pl?sid=05/10/30/0939232&from=rss

http://d.hatena.ne.jp/comnnocom/20051029/hb_social

http://blog.drecom.jp/akky0909/archive/389

(上に挙げたリンクへの直接の反論でない。とりあえず「インスパイヤ」元と思っていただいて結構。なるべく一般論として展開できるよう心がけております。)


 WWW がリンクの絡み合いで構成される以上、「無断リンク禁止」なる宣言が実効性を持つことはあり得ない。自由にリンクを張り合いすることこそが WWW の前提なのであって、それが嫌だったら利用を断念するのが筋というものであろう(あるいは独自のシステムを用意するか)。また言論活動には批評対象の明示が必要であり、リンクはその明示の手段として使われることが多い。「無断リンク禁止」などと宣言する人は、リンクを張らないで批評対象を明示する場合──すなわち URL のみを示すことは許容しているのだろうか。たぶんそこまで考えていないのではないか。
 もし URL の表示や批評対象の明示すら許さないというのであれば、それはナンセンスな主張であるという以上に、言論の自由に対する挑戦とも映る。まぁそうした発言もまた自由ではあるが、御自分でも言論の自由を享受している事実をお忘れなく。というか、そのような素っ頓狂な主張など誰にも聞き入れられないとは思うが(それくらいは想定しておいてくれ →「無断リンク禁止」論者様)。
 さらに「無断引用」とやらまで禁止だと主張するとなると、もはや耳を貸す必要すら無くなるところである。多くのブロガーが御存知であり あちこちで指摘されている通り、引用という行為は著作権法で認められていることなのである(すなわち著作権が及ばない)。それこそ言論の自由を保証するための規定である。引用と認められるためにはいくつかの要件をクリアする必要はあるが、その範囲内であれば著作権者と言えども「禁止」することなどできない。
 けっこう、こういう主張をする人が後を絶たないものなんだな。発言は自由だけれども、間違いなく反論が出るというリスクは理解しておくこと。ここまで間違った主張であれば、的確な反論が即座に入るだろう。


 リンク・引用の問題はさて置いても、人の口に戸は立てられぬ。仮に1人がブログ記事を上げたとして、これに対する読者の反応を拒否することは不可能だということだ(もちろん法に抵触する形での反応には対処できるが)。そうした反応は必ずしも書き手に都合の良いものばかりでなく、批判・反論だってあり得る。その存在を嫌だと思うのなら、批判・反論の類を一切無視するか、最初から公に向けての発言などやめるべきであろう(くどいようだが、法に抵触する「反応」──たとえば名誉毀損などを正当化する意図は私に無いので注意されたし)。
 はてなブックマークについても同様である。たまたま不適切と多くの人間が感じる記事が存在していて、たまたま多くの人間がブックマークした。明確な悪意があって晒し者にしたというのならともかく、あれを一面的に捉えて非難するのが適当と言える事例ではあるまいよ。はてなブックマークがネット初心者の勘違いを晒す場でないことくらいは、多数のブックマーカーを集める記事の殆どがそういうものでないことを見ても明らかだ。それもその筈で、はてなブックマークの使い方など人それぞれなのだから。
 「はてなブックマーク かくあるべき」みたいな話が出てくると、私などは強い違和感を覚える。誰のためのブックマークか──私なら、自分のためである。ブログ記事のネタをメモしておくために使っているのだから。まずネタになる記事をブックマークし、自分の所感をメモし、ブログの記事にする。もちろん全てを採り上げるのではなく、自分のブックマークの傾向を見つつ判断している。あるいはブログに採り上げるまでもないが興味を惹く記事だってあり、それもブックマークする。いわゆる「無断リンク禁止」とか「無断引用禁止」といった話題もそのひとつだ(著作権関係の話題を追いかけているため、そういうのがよく目に留まる)。
 利用法が人それぞれであり それが公開されたブックマークである以上、他人の目を意識する必要はある(私も考えていない訳ではない)。しかし正当な言論が行なわれているもとで、使い方をとやかく言う筋合いのものではなかろう。私が覚える違和感は、使われ方の多様性を無視して議論することの不適切さによるものである。


 はてなブックマークのシステムとしての制限もある。コメント 50字 の制限は特に大きい。主要な感想を書き留めるにとどめざるを得ず(それだけに、私としては逆に利用価値を認めているところだが)、考え得る反論を先回りして検討するようなことはできない。かなりストレートな物言いとなる。
 はてなブックマークで核の部分をメモし、ブログで本編記事を書く人は少なくない(私が愛読させて戴いているブロガーの多くは はてなブックマークでもよく御名前を見かける)。よほど見るに耐えないような(法に抵触する)コメントがあればまだしも、はてなブックマークだけを見てしまって判断するのは早計でないか。どれだけのブログが今回の騒動について記事を出しているか調査しなければ、「きちんと説明」したのかどうかなど判ろう筈もないし、説明が無かったとの前提で論を進めるのは早計である。


 余談だが、『引思日報』さんの「猫がネコジャラシを追うように、エントリーをブクマせよ」との例えは的を射ていると思う(ネコジャラシを誇示するか、あるいはネコジャラシが知らないところに付いているか、そういった細かい話をし出すとキリがないので省略)。ただし相手を傷つけるリスクというものは発言者すべてが持っており、反論を受ける可能性を念頭におくのと裏表に、自己の責任においてブログなりブクマなりで発言しなければならない。発言者それぞれに言論の自由があるのだから、そのぶつかり合いの結果として導き出される必然である。この自己責任を免れる人などいないのだ──法に抵触する発言なら罰せられる可能性があることも含めて。