iTMS で、数字しか売りにされない理由

http://blog.livedoor.jp/memorylab/archives/30080999.html

http://d.hatena.ne.jp/himagine_no9/20050810/p6

 高橋健太郎氏の 『owner's log』 で 「iTMS-J、 4日で 100万曲の 内訳」という記事。 iTMS では、 B'z の“ボックスセット”や、ウルフルズ・ globe などの iTMS オリジナル編集アルバムなどがあるから、その分で売上数が押し上げられているのではないか──という話。うん、これらのアルバムは売上ランキングの上位に来ているし、そうした勢いから考えればこの推測は的を射ていると思う。
 ところで、高橋氏も丸山茂雄氏の言を示して、数字を売りにするアップルへの違和感を表明されている。う〜ん‥‥別に気にする必要のない部分なんじゃないかと思うのだけど。私としては、前の繰り返しにもなるけど、あれは iTMS (そして音楽配信全体)が過渡期であるが故の売り文句でしかないと思うのだ。まだ音楽配信のレベルが申し分ないところまで達してないから、売りになるような部分がまだ無くて、曲数を強調せざるを得ないという。どこのサービスもカタログが豊富になれば売りにはならない。
 例えば。パソコン市場でかつて CPU クロック数が売りになっていた時期があった。でも今では、パソコンとして期待されている機能を実現するには、クロック数をさほど気にしなくても良いところまで来ている。今のパソコンでクロック数を売りにしてるのは Mac ぐらいなものだ(笑)。アップルは以前から(G3あたりから?)比較広告を積極的にやってきた。 iPod だって何千曲入るかという売り文句だったし、 iTMS は売上曲数を逐一発表してきた。やり方としては一貫してる。有効かどうかは別だけど。
 これも繰り返しになるけど、音楽配信に求められているのはアーカイヴ性だ。つまりCDでは廃盤になってしまった音源をも含んだ豊富なカタログ。丸山氏は「新しい物を生み出す」ことにこだわって数値化を批判していたけど、実のところ、新しい音楽と古い音楽はファンの音楽生活にとっての両輪である。どちらも欠けてはいけない。今のメジャーレーベルが新しい音楽を生み出せているかは議論の余地があるが、これだけは言える。今までメジャーは決して古い音楽を大切にしてこなかった。
 メジャーはひたすら「新しい音楽」を売り続けることに専念していた。まぁ大ヒットした「古い音楽」くらいは継続して売ってはいたけれども。しかし大半の曲は廃盤として埋もれてしまっている。彼らは古い音楽を抹殺することで「新しい音楽」ばかりを買わせようとし、そして行き詰まった。新しい音楽をインディーズに求めるのには私も共感できる。でも iTMS のカタログ数の話を冷ややかに見るのは間違ってる。カタログ数を増やしていくという試みは、音楽流通の正常化の試みへの第一歩なのだから。