映画を盗んでいるのは誰か。大切なものを穢しているのは誰か。

http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/cinema/topics/20050719et04.htm

http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/cinema/topics/20050720et06.htm

http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/cinema/topics/20050721et0a.htm

▲今まで全然きづかなかったのだけど、読売新聞で「社会学 映画館」と題した記事が連載されていたのね。上・中・下と3つあって、どれも興味深い内容である。そのうち「(上)」が著作権に関係した内容で、著作権の動向も追いかけている映画好きとしては これにコメントしない訳にいかない。見出しは「海賊版ウォーズ 立ち上がる映画界」。海賊版対策に乗り出した映画業界のドタバタぶりを描いている記事だ。もちろん、映画業界が海賊版対策をするのは本道であり、文句をつけるべき方向性ではない。▲しかし、映画の上映前に流れる「映画が盗まれている 感動も盗まれている 大切なものが汚されていく‥‥」という映像は如何なものか。ただ単に「録画・録音をしないでください」と出せば充分なものを、あんな目障りな(しかも人を小馬鹿にして気にも障る)映像を流す神経。ここのところ見に行った映画すべてに こいつが入っていて、ウンザリしているのだ私は。最近だと、わざと笑い声を出すようにしている。あんなもの、笑いぐさ以外の何物でもない。▲笑いぐさと言えば、試写会でのピリピリ振りも笑える。荷物チェック(カバンの中身を見せなきゃならない)に金属探知器だ。私も一昨日に試写会へ行ってきたが、まさに記事通りの“厳戒態勢”だった。記事の中の「会場の至る所に警備員が配置されたため、試写会の開催費用は通常の3倍以上に膨らんだ」とある。これを笑いぐさと言わずして何と言う。「やりすぎ」「興ざめだ」と考えるのは私だけじゃないらしい。▲「映画」を「盗」んでいるのは誰か。そういえば、本来であれば公共のものになるところだった映画作品が 20年間 「盗」まれる事態となる法改正があったばかりだったな。しかも その作品を「盗」んでいる連中は、金を出したってだけで著作権を握り、多くの作品を倉庫にしまい込んでいる。「感動」が「盗まれている」。しかも編集権は多くの場合、表現の主体である監督にではなく映画制作会社にある。数々の争いの中でどれだけの監督が涙を呑んできたというのか。「大切なもの」が「汚されて」いる。▲権利を行使する主体が、本来の表現の主体から離れていくことで生じる矛盾。海賊版の映画を防ごうと躍起になってる連中を見ていると、まぁ彼らには悪いけど、滑稽にしか映らないのである。第一、海賊版を見ている連中がだ、その海賊版が無くなったからと言って劇場へ足を運ぶのかねぇ? 海賊版対策をやるなとは言わないが、もう少し観客との信頼関係の中でやる方法もあるもんじゃないか?