安全地帯『コンプリートベスト』

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玉置浩二つながりで もう一丁。安全地帯の2枚組ベスト『コンプリートベスト』を入手した。デジタルリマスターで音質向上したという売り文句だったが、正直、あまり変化はない。確かに低音は強調されてるように思うが、もともとスカスカな印象な安全地帯(キティ時代)の音、楽しめるレベルにまで高まったとは決して言えない。というか、高音域がチャリチャリ鳴りまくって、かえって聴きづらくなってるんだが。▲リマスターは前のベスト盤 『THE VERY BEST OF ANZEN-CHITAI』 の時にもされていたが、あまり効果があったとは思えない。やはり根本的なミキシングからやりなおしてデジタル時代に相応しい音にして欲しいものだ。キティ在籍時の安全地帯はアナログ時代の歌謡曲的な音作りだからね。もっとロックの音として聴きたい!▲さて収録曲だが、2枚組ということでなかなか興味深いものとなっている。選曲基準がいまひとつ判りかねるが(笑)。ファーストアルバムの頃の曲が初めてベスト盤に収録されたり(「萠黄色のスナップ」は除く)、B面曲も何曲か選ばれたり。「ラスベガス・タイフーン」は最後まで聴けるヴァージョン(アルバムでは次の曲と重なる)だし、「月に濡れたふたり」は間奏が異なるヴァージョン(おそらくシングル版。ベストには初めての収録だと思われる)。てな感じで、マニアの目を惹くギミックが(笑)。▲基本的に代表曲は網羅されているので、てっとりばやく安全地帯を聴きたい人には便利な盤なのではないか。選曲にこだわる私としては、ベスト1作目の 『I Love You からはじめよう』が一番好きなのだが、コストパフォーマンスでは敵わない。だから、今回の編集盤は「音源集」として楽しもう。つまりこれをベースに自分なりの「ベスト」を組み直すのだ。▲ちなみに、私が推薦する“最強ベスト”は、「ワインレッドの心」「恋の予感」「熱視線」「悲しみにさよなら」「碧い瞳のエリス」「プルシアンブルーの肖像」「夏の終わりのハーモニー」 「Friend」 「好きさ」「じれったい」 「I Love You からはじめよう」「微笑みに乾杯」の 全12曲。 黄金期の曲を網羅した完璧なベスト 『I Love You からはじめよう』である。ただ、曲数の割に値段が高いので、『コンプリートベスト』を買って、自分で組み直してCDに焼こう。

【さらに追記(というか愚痴)】

▲安全地帯がソニーに移籍 (1993年頃 とされる) して以来、キティ(現在はユニヴァーサルの傘下)から編集盤が乱発されてきた。カタログ上の戦略が全く見えないような、売りも選曲基準もない代物ばかりである。安全地帯の編集盤は、ベスト1作目 『I Love You からはじめよう』と2作目『ひとりぼっちのエール』の2枚があれば充分なのである、本来は。これらは実によく練られていた(と言うか、結果的にこうなったということだが)。これとオリジナルアルバム8作(+サントラ1作)、そして『アナザー・コレクション』を入手すれば、ダブリは多少出るが、キティ時代の安全地帯作品をすべて網羅できる──そういう位置付けだった(マニアックなことを言うと、まだ数曲のミックス違いが漏れてしまうが‥‥)。まるでビートルズのオリジナルアルバムと『パストマスターズ』の関係のようなものである(勿論ビートルズの方は、安全地帯と違って戦略的に選曲されている)。▲しかしながら、その後の編集盤の乱発で徐々に先のベスト2枚の価値は薄められていく。その極みだったのが、ベスト1の内容にベスト2収録曲のいくつかを加えた 『THE VERY BEST 〜』 (2001年 発売)だった。 「VERY BEST」 としておきながら、活動の途中までしか選曲対象にせず、またベスト1の完全さ(それは“削りの美学”なのである)を全否定するような水増し選曲。しかもデジタルリマスターを謳っていたものの、その後 安全地帯アルバムのリマスタリング再発売につなげていこうというような積極的な態度はついぞ見られなかった。安全地帯の活動再開に際しても くだらない編集盤以外に反応を見せることは無かった。はっきり言って、キティからの編集盤の多くは金と資源の無駄でしかない(まぁ 『THE VERY BEST 〜』では2曲の未発表曲が日の目を見たわけだが)。▲今回の『コンプリートベスト』も同じ流れだろう。ただ編集盤を出すだけの話。1枚ものは前にやったし、今度は2枚組でやろうか、それならキティ時代全期に渡って選曲しよう、と。そんな感じにしか見えない内容だ。結果的には幾らかマシな内容に落ち着いてはいるが、どうせそのうち全シングル曲網羅のアルバムが3枚組程度で発売されるに違いない。そして、オリジナルアルバムはずっと店頭から消えたままの状態が続くのである。▲安全地帯のカタログをソニーが買い取った方が、よっぽど実のある編集盤やリマスターアルバムが出てくるに違いないと思う(目糞鼻糞かも知れないが)。