エルマークに関するメモ(その2)


 id:mohno 氏のエントリーから。


http://domainfan.com/CS/blogs/mohno/archive/2008/02/22/1775.aspx
「mohno : エルマークの馬鹿さ加減」


 正直な話、俺はこの記事を読んで〈基本線、扱っているネタと方向性は小倉弁護士や inflorescencia さんと同じ〉と考えた。言外にある前提をほじくり返して、まるで反論であるかのように書いてるから解りづらくなってしまっている印象。要所要所では真っ当なことを指摘しているのに何と勿体ないことか。
 ここでは讃えるべき部分を引用させてもらう。



「許可なくエルマークを付けること」は、サイト運営者が「違法コンテンツを持っている」という意思表示になるので、運営者側にとってのリスクになる*1。別に「エルマークがないからといって違法サイトとはいえない」のだから、エルマークなんて気にせず、そのまま運営を続けるサイトがほとんどだろう。そして、この点が第二の問題である。


 前提が気に食わないが、結論は当たってると思う。



エルマークに意味を持たせるのであれば、「RIAJ の管理下にある楽曲はエルマークの認定サイトでしか配信させません」というくらいの意気込みで実施する必要があると私は思う。たとえば、楽曲(曲や詞)を管理する JASRAC は、かなり徹底していて、ちゃんと「作品データベース検索サービス」を提供しているし、利用する際の既定もきちんと決まっていて公開されている。公開の際には JASRAC の承認マークと承認番号を表示することになっているので、印がなければ不正であり、印があれば適法であることがわかる。これだって「勝手に JASRAC 許諾マークをつける」ということは技術的にはできるけれど、許可のない場所につけていることがバレたら、JASRAC 側が対処するだろう。許諾表示なしで楽曲を公開していたら、違法とみなしてやっぱり対処できる(理屈の上では)。


これは JASRAC の許諾マークの有無が適法/違法と(基本的に)連動しているからなしえることであって、iTunes すら対応していない RIAJ/エルマークには望めないことである。そもそも RIAJ は原盤権のデータベースすら提供していない。それこそ、楽曲は販売サイトだけから配信されるとは限らない。「早ね早おき朝ごはん」というサイトでは、左上のリンク先から谷山浩子さん作のテーマソングがダウンロードできる(ログインが必要)。ここにも Licensed by JASRAC マークはあるが、(当然ながら?)エルマークはない。何かのキャンペーンで楽曲(あるいは音)を配信することも考えると、エルマークだけに適法/違法の判断をまかせようとするのは、やはり難しいんじゃないだろうか。


 ここなんて当該記事の最も優れた部分じゃないかと思うのだが。
 しかしこれって小倉弁護士や inflorescencia さんが記事で述べていることを裏から補足しているに過ぎない(いやそのことは文章自体の価値は損ないませんぜ!)。何だか mohno 氏としては反論めいた文脈で書こうとしているように見えるけれども。実は言ってることが同じだったりする。


 私的録音録画小委員会でダウンロード違法化が議論される際に、レコード協会から「適法配信マーク」の構想が発表された。小倉弁護士も inflorescencia さんも、その流れを踏まえた上でエルマークの不備を指摘し、ダウンロード違法化の前提条件にこのマークがなり得ないことを示しているわけ。
 そしてその裏、つまりダウンロード違法化の前提となるとされる(実際はそんなことには論理的にならない──海外のサイトが対象外だから!)「適法配信マーク」たるためにエルマークがどうある必要があるのかという話が上に引用した文章ということになる。
 mohno 氏も「適法配信マーク」化なんて無理じゃん、という結論に至ってるのが興味深いところ。


 さて。 mohno 氏は JASRAC の許諾マークと商標とをあまり結びつけておられないようだが、 JASRAC のマークもきちんと商標登録されている(たとえば商標第4732101号とか参照)。 mohno 氏が「iTunes すら対応していない RIAJ/エルマークには望めない」としておられるものの、実はレコード協会も JASRAC も同じ手法が取り得る。
 今のところ iTunes Store にはエルマークが付いていないという話だが、たとえば次の契約更新の時にエルマークを付けるよう求めたらどうなるだろうか。配信に関してはレコード会社にも許諾権(禁止権)があるから、少なくとも国内では「RIAJ の管理下にある楽曲はエルマークの認定サイトでしか配信させません」ということは可能である(論理的には)。
 要は、やれることをやってないから「このヘタレめ」と言われているにすぎなかったり →レコード協会。


労力ばかりかかるイタチごっこに時間を割きたくなくなる気持ちはわかる。しかし、こんな筋の悪いエルマークなんてものを推し進めてしまって、この先大丈夫なんだろうか、と思う今日この頃である。

 このまとめも、まぁ真っ当。商標権を取ったのは良いけど、これを行使するとなると無断使用のサイトを探し回ったり差止めを求めたりと、著作権侵害への対処と同じ手法を繰り返さないと商標権の意味が無くなってしまうのだから。

*1:引用者注:この一文は間違った前提に立っているため俺自身は賛同しない。