他の管理事業者への“乗り換え”を妨げる JASRAC 規程(知らなかったわ)

http://ohbentoh.blog16.fc2.com/blog-entry-22.html

http://www.jasrac.or.jp/profile/covenant/pdf/1.pdf

http://www.jasrac.or.jp/profile/covenant/pdf/1_old.pdf

 『著作権マニア』にて 「JASRAC とその他の著作権管理事業者」との記事。著作権等管理事業法(去年にこれの見直しに係るパブコメが行われたのを覚えておられる方も多いのでは?)によって JASRAC との競争相手として参入してくる管理事業者が出てくるはずが、とんと出てこないねぇという話。 JASRAC から他の事業者へ管理委託先を変更した場合に、次の契約更改年(だった年)まで“出戻り”できないという規定があって“乗り換え”を防いでいると話題になったことは前にもある。今回のは別の手口。
 まず、現状として全ての支分権を信託できる業者は JASRAC 以外に無いようで、 JASRAC から完全に手を引いて“乗り換え”るという選択肢は無い模様。で、仮に一部の支分権を別業者に委託しようとしても、それを断念させる JASRAC の戦術があるらしい。「すでに JASRAC と信託契約を持っている音楽出版者は、他管理業者と新たに信託契約を結ぶためには、新たに事業部を立ち上げ、その事業部が新たに JASRAC と信託契約を結ばなくてはならないんです」。え? それってどういうこと?
 JASRAC著作権信託契約約款を見てみると、第6条にそれっぽい規定がある。「音楽出版者である委託者(法人に限る。)は、あらかじめ受託者の承諾を得て、その事業部を単位として、受託者との間で二以上の著作権信託契約を締結することができる。この場合、その一の事業部との著作権信託契約は、当該事業部が有するすべての著作権及び将来取得するすべての著作権を信託財産として受託者に移転するものでなければならない」。いまひとつ解らなかったりする。
 他の事業者にも管理を任せる音楽出版者は、 JASRAC との2つ以上の窓口設置を強いられるということになるらしい。こんな規定になっているのは何故か。信託する際には全ての作品(将来に作る作品も含む)を対象とする JASRAC のやり方を維持するための方法なんだろう。仮にある作品のある支分権を他の事業者に預けた場合、その他の作品については全部預けろと。ただその窓口は、支分権を他に預けてるのと別にしろ──てな感じ? ただ、この規定って“乗り換え”を妨害する意図もあるのではないか。
 私が冒頭に書いた“出戻り”妨害規定は、実は今の信託契約約款には無い。去年のパブコメの時点では第21条(現行約款では第22条にあたる)の2項および附則第5条として規定されていたのだけど、今年6月の約款変更で削除されたようだ。で、今回の“窓口2つ”規定は、前の約款にも規定されている。と言うことは二重に委託者“流出”の対策をしていたんだね。今では一つに減った訳だが、いずれにせよ、 JASRAC が反競争的な体質であるのは間違いない。何とかならないものかと改めて思ったのであった。