私的録音録画補償金返還制度

http://www.asahi.com/national/update/0622/TKY200506210380.html

私的録音録画補償金(ここでは録画の方)を返還してもらった人がいるらしい。う〜ん、ネ申! 補償金制度創設以来(朝日記事の表現を借りれば「13年間」)初めての例となる。もともとこの制度では「私的複製」に当たらない使い方──自作楽曲を録音したり、家族の姿を撮影したり──をすれば、メディアに課された補償金を返還してもらうことも可能だった。しかし返還される金額に比して費用と手間がかかること、特に「私的複製」に使用しないことの証明を必要としていたため活用例が無かった。▲文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会では現在、この補償金の見直しについて審議されている真っ最中なのだが、それに合わせて出てきたニュースなのか否か判断は難しい。少なくとも言えるのは、法制小委では既に返還規定が「死文化」しているとの指摘がなされ、議事録として記録・公開されているのが事実だということだ。仮に返還制度の実効性を示したとしても、そのことで補償金制度の存続はアピールできない。▲そもそも返還にかかる費用こそが補償金制度の歪みを示している。8円の返還金に対し、返還請求書類の郵送が 80円、 銀行振込で返還されるため その手数料もかかる。で、意外と見落としやすいと思うのだが、返還するかどうか決めるのに「返還委員会」なるものまで招集されている。どう考えても、わずかな金額を返還するのに見合うものではない。それにしても、この「返還委員会」においてさえ「今後は何をもって証明とすべきか」などと寝惚けた発言が出ていること自体、「死文化」の証明だ。▲これで制度が認知され、返還希望者が殺到すれば 管理団体はどう対処していくのか。今までは返還請求は無いとの前提で制度が運営されてきた。しかも返還制度はおろか、私的録音録画補償金制度そのものの知名度が低いということすら明らかにされている。“知らないことをいいことに広く薄く収奪”してきた形だ。管理団体を経由していくうちにどんどん中抜きされて、一人当たりの分配額を問われても答えられないほど不透明な実態の補償金(注:この箇所訂正しました。次項参照のこと)。莫大な金額を得てホクホクしているのは管理手数料を得る権利者団体だけなのである。これじゃ権利でなく ただの利権。▲こうした制度の歪みに対し、法制小委はどのような結論を下すのか。もともとが「デジタルコピーに課金」などという歪んだところから出てきた発想。この機会にスリーステップテストに立ち返れるか見ものである(この基準で行けば、 iPod に課金などという発想はあり得ないし、補償金制度自体の改正も必要となるだろう)。それはそうと、例の返還請求が見直し推進派の仕掛けだったりしたら面白いな。