実名・匿名論争の落とし所

http://benli.typepad.com/annex_jp/2005/06/post_5.html

小倉弁護士の 『Annex of BENLI』 で「プロバイダ責任制限法の改正について」第2弾が掲載される。「私の目指すところは、ある発言をネット上で行った者は、その発言を現実社会で行った場合と同様の責任をとる社会です」とあるが、「現実社会」を引き合いに出すのあれば必ずしも実名主義に拘る必要はないと思う。現実社会ではペンネームを使う自由が担保されているからだ(それと同時にトレーサビリティも担保されている)。▲「システムに共通IDを組み入れることで、発信者情報の収集・把握という作業をアウトソーシングできるようにしよう」という発想はアリだと思う。現行のサービス登録(プロバイダなどとの契約)を強化することで他のサービスでも共通して使えれば、一からアウトソーシング先を立ち上げるより楽だろうと思うけれど。従来の ISPアウトソーシング、選択肢は多いほど良い(逆に個人情報が一箇所に集まるのは好ましくない)。▲気になるのは、匿名派と実名派の求めるもののバランスを如何に取れるかということ。小倉氏の言うところの「卑怯かつ臆病」で「攻撃してくる人々」は論外(保護されるべき言論とは思われない)として、訴訟を提起できるだけのトレーサビリティであって、個人情報をただ晒すものではない配慮(著作物を発表する際に その名義を決めるのは著作者の権利である)を含めたシステムが必要となる。▲この観点で言えば、小倉氏の前の記事(第1弾)で「知的財産権仲裁センターのようなADR機関に対し、『当該発信者に対して訴訟を提起した場合に勝訴の見込みがないとは言えないこと』を疎明できれば発信者情報の開示を受けられるということにしておけばいいのではないかと思います」とした提言は実現可能な(容認できる)レベルにあるのではないか。いざ実現する際の技術的課題は残っているだろうが、方向性としてはこんな感じでも良さそう。▲小倉氏が自分で言ってる実名主義からは“後退”(私から見れば必要な譲歩)になるとは思うが。